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2017年06月06日

たくさ 大好き小さ

「すごい!固くて大きな力瘤。働き者の腕です。一衛もいつか清作さんのように、米俵を二つ担げるようになります。」
「小さい若さまが?この可愛らしい手で米俵をお担ぎになるので?」
「あい。」
「……ぶっ。」
「直さま?」
「……いや。茶が……な。」

一衛が米俵の下敷きになったところを想像して、口に含んだ茶をあやうく噴避孕 藥きそうになった直正は、すんでのところで堪えた。
負けん気の強い一衛は、きっと泣きながら文句を言うだろう。

「一衛。それより前に、飯をたくさん食って、刈り取った稲を一人で稲木に掛けられるように大きくならねばな。」
「相馬の若さま。小さい若さまは大きくなったら、きっと大した武士におなりですよ。」
「一衛が?そうでしょうか。」
「ええ。手のひらに出来ているのは、竹刀だこでしょう?それだけお励みなのですから、お強くなります。きっとです。米俵もきっと担げるようにおなりですよ。」
「うふふ~。」
父親に甘える幼い兄弟を羨ましそうにじっと眺める一衛の視線に、直正は気付いた。
一衛の父は藩命を受け、その頃、蝦夷(現在の北海道)警備につき家を長く留守にしていた。
この後も、藩主の求めに応じて、京都に駐留する精鋭部隊の一員として参加する一衛の父は、もう二度と家族の暮らす故郷の地を踏む事は無い。
滅多に文も寄越さない父を、一衛は恋しく思っていたが口にする事は無かった。

「一衛。叔父上から、文は届くのか?」
「あい。父上は、しっかりとお役目に励んでいるから、母上を困らせないように避孕 藥一衛もがんばりなさいと、いつも同じ事を書いた文を寄越します。」
「叔父上らしいな。わたしの父上はお城勤めだけれど、一衛の父上は殿をお守りする警護役だからな。寂しくても、我慢しような。」
「……一衛は濱田の家の嫡男だから、父上が御留守の時はお爺さまと母上をお守りするのです……」

一衛は、遠く父の住む場所へ続く空を見上げた。
今は父の姿さえも朧げではっきりとしない。
それほど長い時間、一衛は父に会っていなかった。

会津の子供達は10歳になると上士以上の侍の身分のものは、日新館という藩校に通い、それより下のものは寺子屋や私塾などに通って藩校に通う準備をする。
子弟はひたすら勉学に励み、父母に孝養を尽くし、お国のために働くのだと教わった。
どれ程幼くとも会津に生まれた子供は、矜持を持ち自分の為すべきことを知っていた。
他国のものが、二、三歳の幼児が切腹の作法を知っているのを見て驚いたという話が有る。
な声で返事をしたきり黙ってしまう。

「いいかい?怒っているんじゃないんだよ。一衛、わたしはね、一衛がお熱で苦しんでいるのがとてもかわいいそうで辛かったんだ。代わってあげたくとも、こればかりは出正に叱られたのが悲しくて、一衛は涙来ないことだからね。神仏に願を掛けても、一衛の熱は中々下がらなくて、直さんはとても心配したんだよ?一衛に何かあったら、悲しむ人がんいる事を忘れてはいけないよ?」
「あい。」直正は背を向けてその場にしゃがみこむと、お乗りと声をかけてやった。

「わたしの御背(おせな)は温かいよ、ほら。」

そっと身を預けると、ほんのりと背中から体温が伝わってくるような気がして、一衛は直正の背に頬をすりすりとこすりつけた。

「直さま……。」
「わたしはね、一衛は父上がに蝦夷に行ってしまわれたのに、泣かず口服 避孕 藥に母上をきちんと守ってえらいなぁといつも思っているんだよ。」



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